たーサンの世界



その1  東海道本線全線電化開業前夜



私の記憶に残っている特急 つばめ は昭和31年11月19日の東海道本線全線
電化開業以後の淡緑5号色、すなわち青大将色になってからのことです。

祖父に連れられ東京へ行く途中、横浜駅で見た薄緑色の列車は当時未就学で
あった私にとって何がなんだか分からないが、とにかく〔普通の列車とは違う〕
かけ離れたものとして写りました。

後年絵本で特急 つばめ の存在を知り、横浜駅で見た列車はとてつもない
ものと初めて知りました。

青大将誕生については既述となっていますが、11月19日の電化開業前夜、
私が見たことの無いぶどう2号色を纏った特急つばめの雄姿を撮影されていた方
がおられました。

このほど、日頃お世話になっておりますたーサンより、電化開業前後の貴重な
お写真をお預かりしました。
昭和20年代後半より30年代始めの国鉄黄金時代とも言える日本を代表する
特急列車、また湘南電車と呼ばれ直流電化区間で大活躍した80系など、マニア
垂涎の画像の数々をご覧頂きたいと思います。

素晴らしい〔たーサン〕の世界
まずは電化開業前夜・・・・をご覧に入れます



電化開業前の訓練運転(電蒸運転)
昭和31年10〜11月? 大阪駅
東海道本線全線電化開業前に実施された電蒸運転の写真は書籍で何度か見たことが
ありましたが、たーサンは実際にご覧になっており、歴史に残る貴重なシーンを記録され
ていました。
電気機関車は奇しくも開業当日、青大将色を纏って処女列車を牽引した89号機です。
ご存知のように89号機は鉄道博物館に保存されています。

残念ながら撮影日は分かりません。しかし、電化開業前、米原から大阪までは既にEF
58が牽引していたのでこの画像は電化工事が終わった直後、恐らく10月頃の撮影と
推定します。



ぴかぴかに磨かれた89号機
昭和31年10月〜11月?  大阪駅
電蒸運転の主役は勿論電気機関車、栄光のC59も時代の流れには逆らえないようです



電機と蒸気の異なった汽笛が聞こえてくるような出発シーン
昭和31年10月〜11月?  大阪駅



さて、これからが今回の見せ所、11月18日電化前夜の1レ 特急つばめ 

の大阪到着シーンをご覧ください



米原で機関車を付け替え大阪へ到着した1レ
昭和31年11月18日 大阪駅
ダイヤ改正前なので東京を9:00に発った1レの大阪到着時刻は17:00.
この時期は既にとっぷりと日が暮れているにもかかわらずたーサンは
悪条件を克服し見事に完全電化前最後の〔つばめ〕を撮影されていました。




涎がでそうな つばめ のヘッドマーク
昭和31年11月18日 大阪駅
電化開業前、東京から米原までEF58に牽引されてきた1レ、3レは
米原で宮原区のEF58に付け替えられ大阪を目指してました。

8時間運転もこの日まで、明日より東京〜大阪間は1台の機関車で
牽引30分時間が短縮され、7時間半で東と西を結びました。



殿はマイテ3921
昭和31年11月18日 大阪駅
この画像は既出ですが電化前、1レ最後の展望車の姿です。



電化開業前日の4レ 特急 はと
昭和31年11月18日 12:25 大阪駅
最終日に4レを牽引した機関車は93号機でした。ところが翌日の4レを牽引したのも93
号機です。
大阪から東京まで牽引しトンボ帰りで引き返し2日連続で4レを牽引するという不可解な
謎が浮かび上がりました。

お世話になっているアッキーさんにお聞きしたところ謎が解けました。

前出のように18日までは米原〜大阪間は宮原区の機関車が往復していたわけです。
従いまして、画像の93号機は18日は米原まで4レを牽引し、他の列車を従えて宮原に
帰還。19日、改めて4レを牽引した・・・と言う訳でした。



東京へ向けて出発を待つ 4レ 特急 はと
昭和31年11月18日 12:25 大阪駅
暦を遡っていくと昭和31年11月18日は日曜日です。
当時高校生だったたーサンは一日大阪駅にへばりつき歴史的
瞬間を記録されていました。



鉄道博物館に所蔵されている89号機
2009年1月10日 鉄道博物館
たーサンが大阪駅でご覧になった歴史的瞬間から51年後、
幾多の転線を経て静態保存された89号機は自らは歴史を
語りません。

このような栄光の過去が有った事を心に刻んでおきたいと
思います。


昭和31年11月19日の東海道本線全線電化開業は歴史の通過点として

鉄道ファンの知るところとなっています。

しかしながら、この電化開業を目の当たりにされたたーサンは単なる歴史の

通過点というだけでなく、新幹線開業以上のインパクトのある出来事であった

とのことでした。



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